徳山ダムから導水路へいたる道

1973年(S48)

木曽川水系水資源総合開発計画変更の中で徳山ダム建設決定


1988年(H1)

域外移転466世帯すべてについて移転契約完了


1995年(H7)

徳山ダム建設事業審議委員会設置


1996年(H8)

名古屋市3m3/秒の水利権返上


2000年(H12)

ダム本体着工


2003年(H15)

水資源開発公団 建設費増額発表


2004年(H16)

3県1市一斉に部分撤退表明

(岐阜・愛知・三重・名古屋市)

「徳山ダムに係る導水路検討会」設置


2007年(H19)

「上流分割案」で3県1市合意


2008年(H20)5月

徳山ダム試験放流開始


2008年(H20)9月4日

国交省から水資源機構へ事業継承

木曽川水系連絡導水路建設所発足

導水路建設をめぐる情勢と「市民学習会」の活動報告

木曽川水系連絡導水路」は、徳山ダムに貯まった水を木曽川長良川に導水するものです。

 

徳山ダムの「完成」放流をめぐり、2008年5月前後は関連ニュースが連日賑々しく報道しました。

一般にも知れ渡っている購入予定者がいない徳山ダムの水。

 

古田県知事は4月22日の記者会見で「償還は大きな財政負担」「利用者開拓急ぐ」と述べています。

岐阜県は使う計画がない上水道工業用水分として今後23年間で529億円を返済しなければなりません。

溜まりに溜まった巨額の借金は岐阜県民しいては国民が払うことになります。

 

1.不幸な徳山ダム建設

さて、この徳山ダム事業、スタート間から歓迎されることなく今日まで悲劇を重ねてきました。

建設は1973年(昭和48年)に木曽川水系水資源開発計画の中で決定されました。

当時の社会手状況は「オイルショック」=高度成長経済とともに、水需要の伸びがストップした年です。

 

需要が減ったのに、計画は修正される事はありませんでした。

この事業最大の汚点、徳山村全466世帯がふるさとを追われるいう悲劇を生みました。

2008年7月時点でも、この問題は続いています。

 

1995年にダム建設へ懐疑的かつ批判が高まる中で、徳山ダムについても事業を検討する審議会が設置された。

1996年には、名古屋市が水利権一部返上など「事業転換」のチャンスはありました。

しかし、国は「異常渇水対策」という国民を欺く戯言を作り出し、事業断行の道を進みました。

 

完成が近づいた2003年水資源機構(旧水資源開発公団)は突如事業費1,010億円増額を提示しました。

岐阜県、愛知県、名古屋市には徳山ダムの水を使うアテは全くなく、申し合わせたように約半分の水利権を返上し、「撤退」のポーズを取りました。

しかし、時すでに遅く、返上分は税金負担の「治水」に巻き変えられダム規模はそのままで建設。2県1市の負担額は逆に大幅に増額されという二重の悲劇を背負いながら、2008年5月の放流に至りました。

 

2.導水路計画と「長良川市民学習会」の追及

木曽川水系連絡導水路計画」は、このような徳山ダム事業の経緯に基づき策定されました。

「流域市町村からの要望は無く、行政判断(中部地方整備局)」による策定でした。

 

長良川に徳山ダムの水を流す事、これを知った市民が一斉に反発するのも当然です。

国が情報を隠して事業を推進する中、私たち市民学習会は2007年12月に活動を立ち上げました。

活動する中で、岐阜市や岐阜県がまともな情報を持たずに事業の進捗を黙認する姿勢も浮き彫りになりました。

 

2-2 国土交通省からの回答

市民学習会は市民が「恐れていること」「知りたいこと」を前面に押し立て、4月22日及び5月19日に、事業主である国土交通省(木曽川上流河川事務所及び中部地方整備局)に要請行動を行いました。

その結果、驚くべきこと明らかになりました。

 

一、長良川に徳山ダムの水を求める自治体や団体は無かった。長良川への導水の提案は、長良川の「異常渇水時の危機管理対策」としての国交省の行政判断である。

一、最大の危機であった平成6年渇水で環境被害記録は無い。

国の河川環境危機とは、平6渇水を超える「将来あるかもしれない仮想の渇水」である。

一、非公開の「木曽川水系連絡導水路環境検討会」を第4回検討会より一般にも公開する。

3-1 同検討会では、常時放流の問題について、伊自良川など下流支川で検討する事を提案。

 

「地元説明会」を7市町で、「河川ふれあいセミナー」を岐阜、一宮、桑名で開催する。

※地元説明会は自治会長や地権者に限ったクローズな場。事後の記者発表にて発覚。

※河川ふれあいセミナーは河川整備計画を看板にしたもので「一般に開かれた導水路事業説明会」とかけ離れたもの。

 

3.徳山ダムの水を長良川に一滴たりとも流させません

長良川への導水の提案は、昨年8月の第7回徳山ダムに係る導水路検討会で議論されました。

それを受け3県1市の合意がなされました。

 

市民学習会は、検討会での論議内容が疑問解明の鍵になると考え「議事録の公開」を求めました。

国交省からの回答は「議事録は存在しない」との事でした。

 

国民が求めてもいない事業に890億円をかける検討会の議事録がないとは・・・。

なぜ、ここまで隠し続け、工事着工を急ぐのでしょう。

目的や根拠が不明の事業は、徳山ダムの悲劇を重ねるだけです。

 

導水路により、長良川には常時0.7m3/毎秒が流されます。

名古屋市の工業用水と、渇水時に流す毎秒4.0m3は木曽川下流のヤマトシジミ被害を防ぐためとされる。

(この4.0m3は96年に名古屋市上水が要らないと返上した分の一部)です。

 

需要が減った名古屋市の工業用水事業に、この水は必要ではない。

科学的根拠が無いヤマトシジミ被害を理由にした水は必要ありません。

この問題を曖昧にしてはなりません。

 

3-2 長良川河口堰の利用

すでに、この合わせた毎秒4.7m3を流す下流施設と連携する新たな事業の準備が始まっています。

長良川河口堰の水利用に係る影響検討委員会」が仮称なれども設置されました。

これによると、未利用となっている河口堰の名古屋市上水分毎秒2.0m3と愛知県上水分(不必要になった工業用水を県民に押し付けたもの)毎秒4.52m3をこの連携する施設で流そうというのです。

 

政府(国土交通省)はこの事業に60億円の追加建設費を試算しています。

目的を失った公共事業をいったん許せば、歯止めはなくなります。

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